人間経済科学と賢人たちの教え その25




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
8月号連載記事


■その24 目の前の100万円と将来の1億円

●慌てる乞食は貰いが少ない


 「慌てる乞食は貰いが少ない」という言葉がある。慌てて何かを手に入れようとしてももらえるものは少なく、多くのものを手に入れようとするのであれば、忍耐強く「その時」を待たなければならないという教えである。

 ほとんどの読者がこの教えに共感すると思うが「言うは易し、行うは難し」である。

 例えば、企業の決算。年次決算どころか、上場企業では四半期決算の開示がごく普通になっているが、膨大な費用と手間をかけて四半期ごとの決算を集計・発表し、社長以下役員がIR説明会のために多くの時間を費やすことは壮大な無駄に思える。さらに、長期的な企業の成長よりも目先の決算の利益に経営陣の意識が集中するという点は大いにマイナスである。

 投資の神様ウォーレン・バフェットは、例外的な場合を除き「年次決算を確認すれば十分」であると考える。数年、数十年単位での投資が基本の彼にとっては、四半期決算ごとの数字の動きなど「数字の揺らぎ」にしかすぎず、その企業の「本質的成長力」には影響を与えないと考えるのである。

 投資において、「(将来への)長期投資の方が大きな果実を得ることができることはバフェットが見事に実証している。そして、バフェットは「企業の長期的成長力」に賭けて投資をして成功したのだから、企業経営のあるべき姿もおのずと導かれる。

 しかし、それではなぜ経営者を含む人々は「目先の利益」に執着しがちなのであろうか?


●目の前のものをすぐに欲しがるのは動物の本能

 面白い実験がある。実験用のラットに、3種類の色違いのレバーの使い方を教える。例えば青のレバーを押すと即座に餌が一個出てくる、黄色のレバーを押すと10秒後に3個の餌が出てくる、赤のレバーを押すと1分後に10個の餌が出てくる。一度どれかのレバーを押すと、10分間はどのレバーを押しても次の餌は出てこない。

 読者であれば迷わず「1分間待って10個の餌を手に入れる」であろう。すぐに出てくるからといって、1個のえさしかもらえないのでは大損だ。

 ところがラットたちにいくら教えても、必ず青のレバーを押して1個のえさをすぐにもらうことで満足する。このシステムの仕組みが分からないわけでは無い。しかし、たくさん報酬をもらえると分かっていても1分間待てないのだ。

 よく考えてみれば、これは当たり前のことかもしれない。自然界で目の前に餌があったらすぐに食べてしまわないと、ハイエナや猛獣など他の動物、あるいは自分の仲間に食べられてしまう。だから、一瞬でも待つということは大変大きなリスクであり、そのような「馬鹿げた」ことはしないように動物は進化したのである。人間も文明が誕生する前はそのような状態であったから、「目の前のものがすぐに欲しい」本能が強く備わっているのだ。


●「信頼」とは先送りできることである


 コインはサルでも使える。サルにコインの使い方を教えるとすぐに覚える。
 研究者がコイン1個とバナナ5本をいつでも交換してくれることが分かると、オスザルたちは、メスザルたちにコインと引き換えに交尾を行うよう要求する。よく売春は世界最古の職業だと言われるが、本当かもしれない・・・

 しかし、このサルたちが行うのはあくまで目の前で行う「物々交換スタイル」の取引である。コインを受け取ったメスザルはすぐにバナナと交換し、将来のために貯蓄をするなどということは行わない。

 「交換の先送り」が人間独自の行為であり、これが貨幣経済を発展させ文明の基礎を築いたと言われる由縁だ。

 たとえば、山の村と海の村がそれぞれの産物を目の前で物々交換しようとしたときに、海の村が持参した魚の数が、山の村が持参した山菜の量に見合わなかったとする。海の村の人々が、貝殻を相手に渡して「将来の好きな時にこの貝殻を持って来れば足りない数の魚といつでも交換する」と約束して取引を成立させるのが「交換の先送り」だ。


<続く>

続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
7月号をご参照ください。


(大原 浩)


★「大原浩の逆説チャンネル」が7月7日からスタートしました。
 https://www.youtube.com/channel/UCJHgdztSBm9qn7HDx6SvObw


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)


JUGEMテーマ:株・投資



JUGEMテーマ:経済全般



JUGEMテーマ:社会の出来事




人間経済科学と賢人たちの教え その24




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
7月号連載記事


■その24 日本型経営は「人間社会の進歩の結果」

●アナログはデジタルの進化形である。


 例えば読者が「アナログ人間」とだれかに言われたとしよう。それをほめ言葉だと受け取るケースはほとんど無いであろう。大概の場合、「あなたはデジタルが分からない旧式の人間だ」と侮辱されたと思うに違いない。

 つまり、現在の世の中では、デジタルがアナログよりもすぐれており、アナログがデジタルに進化していくように思われているということだ。しかし、それはまったくの間違いであり。正反対なのだ。

 生物進化の一つの完成形と考えられる読者の体を使って確かめてみたい。

1.読者の両腕を左右に広げる。
2.前を向いたまま左右の手の指先を、それぞれ目の端でとらえる努力をする。

 すると、ほぼ手を180度広げた状態でも、左右それぞれの目の端で指先を見ることができるはずである。

 つまり、人間の「物理的(デジタル)視野」は、左右180度もあり、眼球にはその情景がすべて写っているのだ。

 しかし、この文章を読んでいる読者の視野はせいぜい数十度の範囲に限られる。なぜかと言えば、パソコンで180度の範囲から入ってくる4kなどよりもはるかに高精細な動画を処理するとどうなるかを考えればすぐにわかる。
 デジタル処理が追いつかずに、パソコンがフリーズするはずだ。
 だから、人間の脳は。視覚細胞からやってくる一種のデジタルである、明暗・色彩などの情報を、脳内で再構成するときに、(デジタル情報を取捨選択する)アナログ的手法で処理するよう進化したのである。


●デジタルとアナログは使い分けるべき

 錯視効果を使ったトリックアートを見かけることがよくある。同じ背の高さの人物なのに背景の壁の色や模様の違いなどによって、身長が異なるように見えたり、同じ長さの横線なのに、端につける「矢」の向きによって長さが異なったりするように見える現象だ。
 この錯視は人間の目の不完全性のようにとりあげられるが、前述の莫大な情報処理を避けるために、定型化されたことは脳が「推測」するために起こる現象である。この「推測」のおかげですべてのデジタル情報を処理することから解放されるのだ。

 手品も、「人間が興味を持つものに視野を集中し、関心を持たないものは目に映っていても見えない」現象を利用している。確かに、手品のトリックの種明かしにアナログ的な脳の機能は不便だが、180度の視野の動画をすべてデジタル処理していたら、人類は「高度な思考」を行うことなど到底できず、入ってくる動画の処理に追われる原始的生物のままであったはずだ。


●信頼はデジタル化できない

 読者が使っているパソコンやスマホは、他の端末やホストコンピューターなどと接続されているが、お互いを「信頼」しているであろうか?
 少なくとも現在はそんなことはあり得ない。情報端末は、人間がつくったコンピュータプログラムによって、人間が命令した通りに動く。ハッキングで所有者の意志とは無関係に動くときもあるが、その時もハッキングするのは人間である。

 欧米流のオープンな経営には良い面もあるが、欠点も少なくない。例えば、オープンにすれば、好ましからざる「侵入者」が入り込む可能性も高まる。

 特に米国では、その傾向が強く、「侵入者」に対しての防御としての「契約書」が重要となる。場合によっては電話帳ほどの厚さになるから、その契約書を作成・チェックするための弁護士が繁栄する。また、万が一の場合、裁判を起こす時も、長い年月がかかり巨額な費用を弁護士に支払う必要がある。

 つまり、オープンなデジタル戦略をとることによって、実は膨大な無駄が生じているのである。

 それに対して「日本型経営」は、相互の信頼によって、握手一つで物事を合理的に進めることができる極めて生産性が高い手段だ。ただし、「握手一つで取引できる」信頼関係の構築・維持には、長い年月と多くの労力が必要となる。

 どちらにも一長一短があるが、現在の日本の経営は、欧米流・デジタル型に傾きすぎているから、日本流・アナログ型経営にもっと注目すべきである。


<続く>

続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
7月号をご参照ください。


(大原 浩)


【大原浩の推薦図書】

★「客家大富豪18の金言」(甘粕正)講談社
 (PHP版とほぼ同じですが、30ページほど長くなっています)
 https://amzn.to/3lqUl3Q

★「客家大富豪の教え」(甘粕正)PHP研究所
 https://amzn.to/33ym7VP

★「客家大富豪に学ぶ TAO・永遠の成功のための18法則Kindle版」
 甘粕正 昇龍社
 https://amzn.to/3mrcTlP


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)


JUGEMテーマ:株・投資



JUGEMテーマ:社会の出来事



JUGEMテーマ:経済全般



JUGEMテーマ:歴史




人間経済科学と賢人たちの教え その23




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
6月号連載記事


■その23 ノーベル賞経済学者の大罪

●アルフレッド・ノーベル

 今や世界中の誰もが知るようになったノーベル賞は、1833年にスウェーデンに生まれた化学者、発明家、実業家であるアルフレッド・ベルンハルド・ノーベルの遺産によって創設された。彼は、350もの特許を取得し、中でもダイナマイトの開発で巨万の富を築いたことから、「ダイナマイト王」とも呼ばれた。

 遺言で賞を授与するとされた分野は、まずは物理学、化学、医学または生理学の3分野である。さらに4つ目として(理想的な方向性の)「文学」、5つ目は軍縮や平和推進に貢献した個人や団体に贈る「平和賞」である。

 実業家であると同時に化学者でもあったノーベルが「科学・化学」関連分野の研究を高く評価していたのは間違い無い。ダイナマイトを含む多数の発明は科学・化学の知識のおかげである。

 ノーベルが「文学」を選んだ理由は定かでは無いが、「平和に対する貢献」を賞の中に含めたのはわかるような気がする。

 ダイナマイトは軍事用というよりも、民間建設工事などで重宝されたのだが、その「危険な爆発のイメージ」や、父親がクリミア戦争で兵器生産によって大儲けをしたこともあってか、世間からは「死の商人」と呼ばれることもあった。また、1864年には、爆発事故で弟エミール・ノーベルと5人の助手が死亡し、ノーベル本人も怪我を負った。それゆえ「平和」には人一倍関心があったのではないかと考えられる。

 しかしながら、最初の3つの賞が世界的権威となっているのに対して、後の2つは、選考における恣意性や妥当性の欠如などがしばしば指摘される。
 私も、この2つの賞は、少なくとも現在は格調高きノーベル賞の足を引っ張っているように思う。しかし、それでも「平和賞」がノーベルの遺言によって創設されたのは事実である。

 それに対して、「経済学賞」は、1968年にスウェーデン国立銀行が設立300周年祝賀の一環として、ノーベル財団に働きかけた結果設立された賞であり、ノーベル本人の意志とは全く無関係なのである。そして、その後の選考運用についても首をかしげざるを得ない。


●ノーベル賞経済学者の大罪

 「ノーベル賞経済学者の大罪」(ディアドラ・N・マクロスキー ちくま学芸文庫)はそのノーベル経済学賞についての辛口評論であり、一時期話題になった書籍である。

 著者のディアドラ・N・マクロスキーは、優秀な経済学者であるが、それだけでは無く、本書でも述べられている通り、「彼」から「彼女」になったことでも注目されている。

 「彼女」が女性になってよかったことは「経済学を女性の視点」で見ることができるようになったことだそうだ。

 もちろん「彼」の時代にも「数字を振り回す経済学者」には批判的であったのだが、女性になってみて「机上の空論」をやりとりすることによりバカらしさを感じるようになった。

 確かに私が観察する限り、「屁理屈をこねくり回す」のは概ね男性的特質であり、「生活感あふれる考え方」は女性の特質である。

 私と財務省OBの有地浩が、「人間経済科学研究所」(https://j-kk.org/)を発足したのは2018年4月である。「すでに終った」マルクス経済学はともかく、その他既存の経済学も、やたら数式を振り回して「意味のないこと」を真剣に論じるのはばかげたことであると感じたのがその理由である。

 もちろん、我々は(残念ながら・・・・)女性では無いが、「屁理屈」を排除し、「人間(の生活)」に根ざした「人間経済(科学)」に舵をとったのは、彼女の考え方に通じるところがあると思う。


<続く>

続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
6月号をご参照ください。


(大原 浩)


【大原浩の推薦図書】

★「客家大富豪18の金言」(甘粕正)講談社
 (PHP版とほぼ同じですが、30ページほど長くなっています)
 https://amzn.to/3lqUl3Q

★「客家大富豪の教え」(甘粕正)PHP研究所
 https://amzn.to/33ym7VP

★「客家大富豪に学ぶ TAO・永遠の成功のための18法則Kindle版」
 甘粕正 昇龍社
 https://amzn.to/3mrcTlP


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)

JUGEMテーマ:歴史



JUGEMテーマ:社会の出来事



JUGEMテーマ:経済全般



JUGEMテーマ:株・投資




人間経済科学と賢人たちの教え その22




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
5月号連載記事


■その22 アダム・スミスと人間経済科学

●アダム・スミスと「道徳感情論」


 アダム・スミスの名前を知らない読者は多分いないであろう。彼が1776年に発刊した「国富論」は、今でも経済学の聖典として扱われている。スミスが「経済学」の始祖というべき人物であることに異論は無いはずだ。

 しかしスミスが、映画ハリー・ポッターの撮影に使われたと言われるグラスゴー大学の道徳哲学(最初は論理学)教授であったことはあまり注目されない。1759年に「道徳感情論」を出版したが、当時はこちらの方が大ベストセラーであり、「国富論」はこの大ベストセラーの内容のうち「人間の経済」に関わる部分をより詳しく解説した別冊として企画されたのだ。

 したがって、「国富論」を読むだけでは、アダム・スミスの思想の表面だけを撫でることになってしまう。彼の思想の本質は「道徳感情論」の中に存在するのだ。そして、その本質とは、人間社会が「人々の共感」で動くということである。その「共感」によって機能している人間社会の一部が「経済現象」であるというのがスミスの考え方だ。

 経済というのは人間社会の営みの一部であり、決して切り離せるものでは無いというのが、アダム・スミスの主張であり、「人間経済科学」とは、アダム・スミスという「原点」に戻ろうという考え方ともいえる。


●専制君主である神を否定するための唯物論

 マルクス経済学も近代経済学も基本的に「唯物論」であり、「人間(性)」を無視している点が最大の欠陥だ。もちろん、これについては同情すべき理由もある。

 アダム・スミスが活躍した18世紀にも宗教裁判がしばしば行われており、「道徳感情論」の中にも、宗教裁判にかけられて火あぶりや八つ裂きの刑に処せられるのを避けるためと思われる、教会に媚びたような文章が見え隠れする。「道徳感情論」で述べられている内容は、現在の我々にとって何の違和感もない。

 しかし、カトリック教会の専制支配が続き「すべて神の御心」で済まされていた時代に、人間の社会が自らの意思で動くという考え方自体が危険思想であったのだ。ただし、聖職者以外の多くの人々がアダム・スミスの思想に共感したからこそ「大ベストセラー」になったわけだが。アダム・スミスの母国は、ローマ教会から分かれた英国国教会が勢力を持っていたから、頑迷なカトリック国であるフランスなどより状況はまだましであったと思う。

 このような、現在の北朝鮮並みの専制支配が行われていた中世暗黒時代が終わったとは言え、その後も「神の先制支配」が続く世の中で、「神」を否定するために「唯物論」が勃興したというわけだ。


●合理的経済人という「金で動く人間」

 マルクス経済学は、才能豊かな生身の人間を「労働力」という計算可能な「もの」としてしか扱わなかったが、近代経済学でも「合理的経済人」という、人間性のかけらも無い標準モデルで説明しようとするから役に立たないのだ。

 私や読者も含めて、この世の中に「合理的経済人」に当てはまる人々がどれほどいるであろうか?

 例えば、子供の養育には多額の費用がかかる。一般家庭でも数十年間の累積では数千万円、場合によっては数億円になるであろう。もちろん、老後に世話になるかもしれないが、現代ではその可能性は高く無い。しかし、いくら少子高齢化と言っても、子供を産む人々がいなくなるわけでは無い。当然、そこには金銭の損得を超えた動機がある。

 また、行動経済学でよく行われる実験に最後通牒ゲームというものがある。AとB二人の被験者を決め、Aに1万円を渡し、「二人で自由に分けるよう」指示する。ただし、Bがその分配案を拒否すれば二人とも1円ももらえない。

 合理的経済人の考え方によれば、Aが9900円でBが100円という分配案でも、Bはゼロよりも100円の方が儲かるから拒否するはずが無い。ところが現実には、そのような申し出はことごとく却下され概ねBの受取金額が3割から5割程度になるところに落ち着く。つまり、人間というのは、少々の経済的利益を犠牲にしても、不公正な行為を罰する動機を持っており、その考え方が社会全体に浸透しているということだ。


<続く>

続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
5月号をご参照ください。


(大原 浩)


【大原浩の推薦図書】

★「客家大富豪18の金言」(甘粕正)講談社
 (PHP版とほぼ同じですが、30ページほど長くなっています)
 https://amzn.to/3lqUl3Q

★「客家大富豪の教え」(甘粕正)PHP研究所
 https://amzn.to/33ym7VP

★「客家大富豪に学ぶ TAO・永遠の成功のための18法則Kindle版」
 甘粕正 昇龍社
 https://amzn.to/3mrcTlP


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)


JUGEMテーマ:株・投資



JUGEMテーマ:歴史



JUGEMテーマ:社会の出来事



JUGEMテーマ:経済全般




人間経済科学と賢人たちの教え その21




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
4月号連載記事


■その21 「現場重視」の日本型経営が競争力の秘密

●人間は狂ったサルか?


 「人間は狂ったサルである」と表現されることがしばしばある。縄張り争いのために、敵(国)を攻撃して殲滅するだけでは無く、核兵器などというものまで生みだして、敵だけでは無く自国も含めた人類滅亡の危機を招く。
 さらには、存在するかどうかもわからない「神」のために凄惨な殺し合いを行う。果ては、自分の信じる神を敬わないからと言って、生きたまま焼き殺したり、車で八つ裂きにしたりする。
 このような人類を「正気」だというのは難しいであろう。

 それでは、人類が狂っている原因は何か?
 人間の知性や思考を、他の動物から際立たせている、極めてよく発達した大脳皮質にあるのだ。もちろん、大脳皮質が発達することによって、人間の高度な文化・文明が進展した(因果関係が逆の考え方もある)のは間違いが無いが、「天才と◎◎は紙一重」という言葉があるように、何事にも表と裏、作用と副作用がある。

 例えば、宗教や特定思想に洗脳されて、場合によっては「殺人」まで犯すようになるのは、大脳皮質が発達した人間の特徴である。


●机上のクウロニストの弊害

 勉強ができる受検秀才は、多分大脳皮質が発達しているのであろう。頭の中だけで理論を構築すること、つまり「机上の空論」にたけている。
 このような人々を「机上のクウロニスト」と呼ぶことにしよう。

 彼らは、その能力によって「素晴らしいプラン」を構築することができる。
 しかし、プランはあくまでプランである。うまくいくかどうかはやってみなければわからない。

 科学というものが、その厳しい現実を如実に示してくれる。どのような素晴らしい理論であっても、実験や観測によって検証されなければ、「事実」とはみなされない。ニュートンやアインシュタインの精緻な理論体系でさえ、目覚ましく発展する科学上の新発見・新研究によって、どんどん修正されていく。
 つまり、科学というものは、理論を実験・観察によって確かめることによって発達してきたのだ。

 「国富論」を著し、現代経済学の源流とも言えるアダム・スミスは、「オイスタークラブ」というランチ会をしばしば開き、天文学者を始めとする当時の第一線の自然科学者との意見交換を活発に行った。「国富論」もそのような自然科学的思想がベースになって書かれたといえる。

 現在のビジネス・経済においても同様だ。机上のクウロニストがはびこるようであれば、経済・ビジネスの発展は望めない。


●机上のクウロニスト養成機関

 ピーター・F・ドラッカーは、「学校を卒業したばかりで現場経験の無い若者を本社勤務にいきなり配属する風潮は、本人にも会社にも不幸である」と述べている。
 また、「現場を経験して本社勤務になった後でも、『現場感覚』を忘れないよう定期的に現場の仕事に戻るべき」とも主張している。

 さらに、MBAホルダーが、ろくに現場経験も無いのに、本部で重用されることにも批判的だ。

 そもそも、MBAスク―ルを始めとする学校では、「すでに解決された事例」しか教えない。受検秀才は、「答えがすでにある問題」を解く能力が高いということである。
 しかし、我々がビジネスで直面する課題の多くは「正解が一つでは無い」し、誰も解いたことが無いものが大部分だ。似たように見えても、社会・経済環境さらには、自社内の状況も刻一刻と変化するから、過去の正解が今も正解であるとは言えない。

 ところが、机上のクウロニストは、自分の頭の中だけで、立派なプランを創り上げる。
 頭の中であれば、どのような空想や妄想も自由であるが、それが現実に合うとは限らない。そして、大脳皮質が極度に発達した机上のクウロニストは、まるで宗教を信じるかのように自説に固執し「私の机上の空論がうまくいかないのは、やり方が悪いせいだ」と考えがちだ。

 しかし、科学において、どのような優れた理論でも、実験・観察の結果修正されていくのと同じように、ビジネスプランも、「現場での実験・観察」によって修正されるべきなのだ。そもそも、ほぼすべてのビジネスプランというのは、理論にも至らない「仮説」にしか過ぎないのだから、「現場」に答えを聞くしか方法が無いということである。


<続く>

続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
4月号をご参照ください。


(大原 浩)


【大原浩の推薦図書】

★「客家大富豪18の金言」(甘粕正)講談社
 (PHP版とほぼ同じですが、30ページほど長くなっています)
 https://amzn.to/3lqUl3Q

★「客家大富豪の教え」(甘粕正)PHP研究所
 https://amzn.to/33ym7VP

★「客家大富豪に学ぶ TAO・永遠の成功のための18法則Kindle版」
 甘粕正 昇龍社
 https://amzn.to/3mrcTlP


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)



JUGEMテーマ:株・投資



JUGEMテーマ:社会の出来事



JUGEMテーマ:経済全般




人間経済科学と賢人たちの教え その20




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
3月号連載記事


■その20 事件は現場で起こっている

●デジタルは原始的である


 一般的に、「アナログ」という言葉は、「時代遅れで古臭くて機能が劣っている」という意味合いで使われることが多い。逆に「デジタル」は「先進的・未来的・挑戦的」なイメージで語られることが殆どだ。

 確かに、人間を始めとする生物界、さらには人工の建設物も含む環境はほぼすべてアナログだから、近年登場したデジタルが革新的だと思うのも無理は無い。

 しかし、地球誕生以来の生命の歴史を考えれば、「デジタルからアナログ」へ進化してきたと考える方が正しいのだ。

 例えば、コンピュータ上で生活する(画面上を動く)生物は、ごく簡単な単細胞生物のようなものであれば、デジタルで十分作成できるのだ。ところが、その生物がコンピュータ上で「進化」していくにつれて、どんどん複雑な存在になる。すると、スーパーコンピュータでも計算できない程の計算量を持つ存在になる。つまりアナログ化するわけだ。

 もちろん、数十兆個の細胞で出来上がっている人間の複雑さは、どのように複雑なデジタル生物をも凌駕する。その複雑な人間が機能するためには、膨大なデジタル情報のすべてを扱うのではなく、重要な情報を「直感的」に選択して、残りは捨てる「アナログ機能」が必要不可欠なのだ。


●人間の脳は情報を捨てるためにある

 例えば、読者の両手を左右に広げてもらいたい。そして、両方の指先を見るように集中してほしい。すると、指先が見えるはずである。実は人間の目は、左右ほぼ180度「見えている」のだ。しかし、実際に見るためには「脳で認識される」ことが必要である。眼球の中に光が入っただけでは、実は何も「見えていない」のである。

 人間の眼球に入るすべての(デジタル)情報を脳が処理していたらすぐにパンクする。例えば高画素のデジタルムービーをダウンロードしたことがある人ならわかるだろうが、画像のデータ量は莫大である。しかも、人間の目の解像度は5億画素程度あると言われる。普通のデジカメの画素数が数百万、高機能なもので数千万画素であることを考えれば、とてつもないデータ量だ。

 そこで、脳は通常、視野の中心部分しか見ておらず、残りの視野の情報は捨てているのだ。この視野の中心をどこに定めるのかを判断するために発達した「価値判断」がアナログなのである。

 「だまし絵」に人間の脳が騙されるのも、脳が、最小限の情報を使って、重要な判断を素早くできるように、「計算の近道」を行っているからなのである。
 デジタルが「価値判断」を持たない、究極的には「セロと一」の集合であるのに対して、アナログは「ゼロと一」では表すことのできない「価値判断」を伴うものだといえる。


●コンピュータはアナログに進化しつつある

 実際、デジタルで始まったコンピュータも、高度化するにつれてアナログ化し始めている。例えば、ディ―プラーニングなどで学習するコンピュータは、当初の人間が作成したプログラムから「進化」していくわけだが、進化の結果複雑化したコンピュータが出した計算内容を「デジタル的」に検証できないという問題が持ち上がっている。コンピュータが学習したことをすべて追いかけることは現実には不可能(だからこそ、コンピュータ自身に学習させる)なのだ。
 したがって「あの人の言うことは信じることができる」のと同じように「あのコンピュータは信じることができる」というアナログ的判断に頼らざるを得なくなってきている。

 また、最先端技術として騒がれている量子コンピュータも、同じように「計算結果を検証できない」という問題を抱えている。

 世間に数多く出回っている量子コンピュータもどきは別にして(量子コンピュータの原理を応用したコンピュータというのは、要するに既存のコンピュータにしか過ぎない)、本来の量子コンピュータは「量子の重ね合わせ現象」を利用する。
 この「量子の重ね合わせ現象」はごくわずかの間しか維持できないし、すべての可能性を計算するのではなく、「結果と思われる値」だけを我々に教えてくれるのだ。だから、その答えが正しいかどうかは、デジタル的には証明できず、アナログ的に理解するしか他に方法が無いのである。


<続く>

続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
3月号をご参照ください。


(大原 浩)


【大原浩の推薦図書】

★「客家大富豪18の金言」(甘粕正)講談社
 (PHP版とほぼ同じですが、30ページほど長くなっています)
 https://amzn.to/3lqUl3Q

★「客家大富豪の教え」(甘粕正)PHP研究所
 https://amzn.to/33ym7VP

★「客家大富豪に学ぶ TAO・永遠の成功のための18法則Kindle版」
 甘粕正 昇龍社
 https://amzn.to/3mrcTlP


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関し ては御自身の責任と判断で願います。)



JUGEMテーマ:経済全般



JUGEMテーマ:株・投資




人間経済科学と賢人たちの教え その19




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
1月号連載記事


■その19 インディ・ジョーンズと「人間経済科学」

●経済学(社会科学)は数式では表せない


 天文学、数学、物理学のようないわゆる「自然科学」では、仮説を立て、それに基づいた実験を行ったり、論理的に完全に実証できる「証拠」を見つけ出して、仮説の正しさを証明する。

 しかし、歴史に「もしもは無い」と』よく言われるように、設定条件を変えて「本能寺の変」をやり直すなどということは不可能だ。映画やドラマでは、歴史の「もしも」を扱った作品がよく見られるが、それは「あり得ないことを実現したい人間の願望」といえる。

 また、人体実験はもちろんのこと、例えば貧富の差が人格形成に与える影響を調べるために、生まれたばかりの赤ん坊を両親から引き離して、貧困家庭と富裕家庭で育てさせるなどということも、倫理上当然許されない。「人間」や「人間に関わる学問」において「実験」や「証拠」に基づいた検証を行うことが難しいのは、これらの学問が持つ宿命かもしれない。

 その中間的存在とも言えるのが、生物学、動物学などの学問だろう。彼らにはかわいそうだが、「モルモット」に代表されるように、危険な注射をされたり、臓器の一部を切り取ったり加えたり、さらには、子供を親から引き離すというような社会構造を確認するための実験も頻繁に行われる。

 体の構造については、かなりの部分、自然科学的に立証できるが、細胞の間の相互作用などは、必ずしも数式で表すことができず「生命」の神秘を感じざるを得ない。胎児がいつから人になるのかは、いまだに各国で見解が分かれているし、「脳死」がほんとうに人間の死であるかどうかについても、議論が続いている。

 さらに、細胞で構成される生物の体=個体が集団でどのように機能するのかを、数式で表すことは、少なくとも現在のところはできない。ファーブル昆虫記として有名な、フランス人昆虫学者ジャン=アンリ・ファーブルの「昆虫記」(第1巻が1878年の出版で、以降約30年にわたって全10巻で出版)を、ダイジェスト版で子供の頃読んだ読者は多いであろう。この本が今でも名著とされているのは、生物(の社会・行動)を理解するうえで「観察」が極めて重要であることを意味している。

 動物や昆虫の社会でさえ、数式で理解することができないのであるから、それよりもはるかに高度な知的生物の集団である人間社会や経済を数式で理解できるなどと考えるのは浅はかである。

 実際、色々な経済学派から経済学の祖とあがめられるアダム・スミスは、「オイスタークラブ」という昼食会を主催し、天文学者など当時の第一線の自然科学者たちとの交流を行ったが、「国富論」などの著書に数式など使ってい
ない。


●「心の無い」経済学は意味が無い

 人間が「昆虫の気持ち」を理解するのは困難(擬人化されることはよくあるが、それが本当の気持ちかどうかはわからない)であるが、人間の気持ちを理解するのは比較的容易である。

 アダム・スミスの本業(グラスゴー大学の道徳哲学の教授)の著書である「道徳感情論」は、当時「国富論」をしのぐ大ベストセラーであった。
 ちなみに、「国富論」は「道徳感情論」の中の経済に関する諸問題を詳述するために、一種の別冊として出版されている。
 この「道徳感情論」の中で、アダム・スミスは、「人間の行動を決める判断」において「共感」が占める極めて重要な役割を詳しく述べている。

 共産主義、資本主義、どちらも基本的には「唯物論」であり、「共感」を始めとする「人間の心」が無視されていることが、大きな問題である。

 例えば、「お金が欲しくない人間はたぶんいない」であろうが、「金さえもらえば何でもやる人間」も、滅多にいないはずである。

 人間の行動の動機には、「(経済的)損得勘定」以外のものが相当含まれているのは火を見るよりも明らかなのであるから、「人間の心」を論じない経済学や社会学など全く無意味といえる。


<続く>

続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
1月号をご参照ください。


(大原 浩)


【大原浩の推薦図書】

★「客家大富豪18の金言」(甘粕正)講談社
 (PHP版とほぼ同じですが、30ページほど長くなっています)
 https://amzn.to/3lqUl3Q

★「客家大富豪の教え」(甘粕正)PHP研究所
 https://amzn.to/33ym7VP

★「客家大富豪に学ぶ TAO・永遠の成功のための18法則Kindle版」
 甘粕正 昇龍社
 https://amzn.to/3mrcTlP


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)


JUGEMテーマ:経済全般



JUGEMテーマ:社会の出来事




人間経済科学と賢人たちの教え その18




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
12月号連載記事


■その18 人間経済科学が目指すもの

●「人間経済科学」とは


 「人間経済科学」という言葉は、私と財務省(大蔵省)OBの有地浩が中心になって「人間経済科学研究所」(https://j-kk.org/)を創設する際に生み出した造語である。

 したがって、「人間経済科学」とは、「人間経済科学研究所」で研究している内容という定義の手法もあり得るが、それでは、読者にはいったい何のことかわからないであろう。

 端的に言えば、「人間経済科学」とは、「人間」と「経済」を結び付けて考察する学問である。「経済とは人間の営みの一部」であるから、これは当たり前のようにも思える。しかし、これまでの経済学、特にマルク主主義や近代経済学のように「唯物主義」に基づく学問では、人間を「個性や感情を持たないもの」として扱う。典型的なものが、近代経済学における「合理的経済人」という概念である。

 この「合理的経済人」なるものは、私に言わせれば「金儲けロボット」である。感情・知性・思考など、人間性の根幹を成すと考えられるありとあらゆる要素を排除した「抜けがら」と言えるかもしれない。

 人間が「合理的経済人」とはかけ離れた存在であることは、我々自身の日常の行いを振り返れば明らかである。

 例えば、「天井の無いアウシュビッツ」と呼ばれるウイグル(新疆)で生産された綿を使って製品を製造しているとして、多くの世界的ブランドが糾弾された。特に「新疆綿」というネーミングの製品を販売した日本企業は、「人権感覚が欠如」しているとして厳しい非難にあっている。
 また、「フェア・トレード」も「適正価格」=「割高な価格」で商品を買おうとする運動である。

 「合理的経済人」であれば、前記の問題となど関係なく、より安いものを買うという「合理的」な行動を取るはずだが、そのような人々が実際どの程度いるのだろうか?


●人間は心で動いている

 多くの読者が、大学(高校・専門学校など)を卒業し就職するときに、どのような選択をすべきなのか悩んだであろう。その時に「生涯賃金が最も多くなるであろう」という理由だけで、職業を選択した人々がどれほどいるだろうか? 普通は「仕事のやりがい」、「企業イメージ」などに大きく影響されたはずである。

 同じように、人間が商品やサービスを利用するときにも、「価格」だけで選ぶわけでは無い。ブランドへの信頼、企業イメージなど目に見えないものに、判断が大きく左右されるのだ。

 このように「多様な心」を持った人間を「合理的経済人」=「金儲けロボット」の集合体としてとらえる(近代)経済学が「まったく役に立たない」と言われるのも当然である。
 運用チームにノーベル経済学賞受賞者などを集めたロングタームキャピタルマネジメント(LTCM)が1999年に破綻の危機に直面したのは有名な話であり、ノーベル賞経済学者の大罪(ディアドラ・N・マクロスキー著、ちくま学芸文庫)においても、現代の経済学の行き詰まりが描かれている。


●事件は現場で起こっている


 「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」というのは、1998年に織田裕二扮する青島刑事が映画「踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間」で叫んだ名セリフである。

 私も、「机上の空論」を振りかざす学者の方々と出会う度に、同じ言葉を心の中で叫んでいる。

 実際、色々な経済学派において始祖としてあがめられるアダム・スミスも、実は「事件は現場で起こっている」と主張しているのだ。

 そもそもアダム・スミスはグラスゴー大学の道徳哲学の教授であった。つまり「人間がどのように振る舞うべきか」=「人間行動学」の研究者であったとも言える。その集大成が1759年に発刊された「道徳感情論」である。当時は、この書籍がスミスの代表的著作とされ、多くの人々に読まれた。現在有名な「国富論」は、1776年に「道徳感情論」の人間の経済活動に関する部分に焦点を合わせた「別冊」として出版された。

 また、スミスは当時の第一線の自然科学者との親交が厚く、「オイスタークラブ」などと名付けられたランチ会などを頻繁に行っていた。彼は、数式は振り回していないが、自然科学的な発想は「国富論」の中にふんだんに織り込まれている。

 さらに「国富論」の中で、スミスは、「ジャガイモなどの庶民の生活必需品の価格」など市井の様子に詳しい側面を見せている。決して、象牙の塔の中に閉じこもらず、一般の人々の中に飛び込んで「現場を自分の目で見る」ことに重点を置いていたのだろう。

 アダム・スミスは、経済を独立した事象として切り取って観察しているのではなく、あくまで人間の営みの一部としてとらえたからこそ、今でも色あせない鋭い視点で「国富論」を著すことができたのだ。


<続く>

続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
12月号をご参照ください。


(大原 浩)


【大原浩の推薦図書】

「客家大富豪18の金言」(甘粕正)講談社
 (PHP版とほぼ同じですが、30ページほど長くなっています)
 https://amzn.to/3lqUl3Q

「客家大富豪の教え」(甘粕正)PHP研究所
 https://amzn.to/33ym7VP

「客家大富豪に学ぶ TAO・永遠の成功のための18法則Kindle版」甘粕正 昇龍社
 https://amzn.to/3mrcTlP



(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)



JUGEMテーマ:株・投資



JUGEMテーマ:歴史



JUGEMテーマ:社会の出来事



JUGEMテーマ:経済全般




人間経済科学と賢人たちの教え その17




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
11月号連載記事


■その17 資本主義社会では誰もが味方であり敵である

●知らないやつは殺せ


 「銃・病原菌・鉄」(草思社)のベストセラーで有名なジャレド・ダイアモンド氏の著作に「昨日までの世界」という本がある。同氏が鳥類研究などのために足しげく通ったニューギニアなどの「小規模血縁集団」と現代の「巨大な国家」との対比の中で「人間社会の本質」を見事に描き出している。

 両者は奥深い部分での共通性がかなりあるのだが、違いも相当ある。その中でも特筆すべきなのは、「小規模血縁集団」は、文字通り「血縁関係がある顔なじみの集団」で暮らしているのに対して、現代人は「日常の大部分をどこのだれか分からない人物との接触」に費やしていることである。

 「小規模血縁集団」の場合は、隣の集落と友好関係を結ぶこともあるが、大概は限られた食料資源の確保をめぐって緊張関係にあり、見慣れない者が自分たちのテリトリーにいれば「追い払うか殺すか」のどちらかである。したがって、隣の集落を通り過ぎて、さらにその先へ行くことさえできない者が大半だ。

 江戸時代の日本や中世欧州の農民でさえ、自分の村に縛り付けられて、自由な旅などできなかった。そもそも、当時の庶民が旅に出ることができたとしても、「東海道中膝栗毛」に描かれているように、徒歩が当たり前であった。
 ちなみに「膝栗毛」とは、膝から下が馬の脚=馬に乗る代わりに自分の足で歩くという意味である。

 また、伊勢参りが庶民のあこがれであったのも、知り合いだらけの狭い村から脱出できる数少ない機会であったからだ。

 このような社会では、当然のことながら「見たことが無い他人」は「追い払うか殺す」べき対象である。


●現代人は見知らぬ他人の中で生きている

 読者が、朝の通勤時に立ち寄ったKIOSKやコンビ二の店員と知り合いであるというケースはどのくらいだろう?どこのだれか分からないケースが大半では無いだろうか?

 ネットの世界では匿名が珍しくないし、顔や声、姿かたちもわからない(写真や動画を見てもそれが本人かどうかはわからない)。よく考えたら物凄いことである。

 あるドキュメンタリー番組で、二通りの方法で道行く人に実験を行った。
 一つ目は、マイクも何も持たず手ぶらで「現在の政権に対する意見を伺いたい」と道行く人に尋ねる。当然のことのようにこの「インタビュー」に答える人はほとんどいなく、完全に無視して通り過ぎる。

 二つめは、マイクを持った上に、大型のカメラを携えたクルーを同伴する。
 すると、ほとんどの人間が丁寧に質問に答え、無視する人間などいなかった。

 しかし、実験だからこの取材はまったくの偽物である。なぜ、前者では疑うのに、後者では全く疑わないのか?

 また、3億円事件の犯人が、白バイと制服で警官の扮装をして、現金輸送の担当者をだましたのはあまりにも有名だ。しかし、それ以後現在に至るまで、制服を着た警官から職務質問を受けた時に、「偽物かもしれないから警察手帳を見せろ」という人間は滅多にいないし、「その警察手帳も偽物かもしれないから警視庁(警察庁)で鑑定してもらう」という人は皆無と言っていいだろう。

 世の中には、詐欺事件が蔓延し「他人は信用できない」と考える人が少なくない(実のところ私もその一人だが・・・)が、現代社会は、実は騙されるリスクがあるにもかかわらず、他人を信用することによって成り立っているのだ。


<続く>

続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
11月号をご参照ください。


(大原 浩)


【大原浩の推薦図書】

★「客家大富豪18の金言」(甘粕正)講談社
 (PHP版とほぼ同じですが、30ページほど長くなっています)
 https://amzn.to/3lqUl3Q

★「客家大富豪の教え」(甘粕正)PHP研究所
 https://amzn.to/33ym7VP

★「客家大富豪に学ぶ TAO・永遠の成功のための18法則Kindle版」
 甘粕正 昇龍社
 https://amzn.to/3mrcTlP


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)




JUGEMテーマ:株・投資



JUGEMテーマ:社会の出来事



JUGEMテーマ:歴史




人間経済科学と賢人たちの教え その16 現代の経済社会は、会社や国家というチームでプレーする




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
10月号連載記事


■その16 現代の経済社会は、会社や国家というチームでプレーする

●スーパーヒーローはかっこいい

 仮面ライダー、ウルトラマン、スーパーマン、バットマンなど、私世代でもなじみがあるスーパーヒーロー達は、基本的に「ピン」である。相棒がいる場合もあるが、率直に言えば「アシスタント」程度の役割しか果たさない。
 ミステリー(探偵小説)の金字塔であり、最も映画化・ドラマ化されたといわれる小説である「シャーロックホームズ・シリーズ」のホームズとワトソンの関係も、探偵とアシスタント兼記録係であると言ってよいであろう。

 しかし、最近のヒーローものは、ゴレンジャーなどのように「対等な立場の仲間が力を合わせる」スタイルが増えてきているように思える。ワンピースは、ヒーローものや戦隊ものとは違うが、「個性的な仲間たちが力を合わせる」という点では同じである。

 さらに「モ―ニング娘」から始まって「AKBシリーズ」や「EXILEシリーズ」などの絶えない人気を見ていると、まるでガレージで立ち上げたベンチャーが、次々と関連企業を立ち上げ、破竹の勢いで成長する姿を思わず重ね合わせてしまう。

 AKBシリーズの場合は、それぞれのタレントは別々の事務所に所属しており、プロジェクトはブランドや活動機会を提供しているだけであるからまさにフランチャイズシステムである。さらには、アジアを中心とする海外にまでフランチヤイズシステムを広げているのであるから、恐れ入る(メンバーは現地の少女たち)。

 一時期、篠原涼子、安室奈美恵などに楽曲を提供し、ヒットを連発し時代の寵児となった小室哲哉氏は、「ヒット戦略のカリスマ」としてしばしばビジネス講演会の講師を引き受けていた。同氏は現在芸能界を引退し(最近復帰したとの報道がある)、不遇な状況にあるとも言えるが、一つの時代を創り上げた才覚ある人物とも言える。
 芸能界というのは、世の中の流れをもっとも敏感に反映する場所であり、経営者やビジネスマンが多くを学ぶことができる。


●知識社会では労働者が生産財を保有する

 ピーター・F・ドラッカーは、これからの「知識社会」の到来を予想している。古典的な経済学では、「利益を得るための生産財」は資本家が独占し、貧しい労働者は生産手段を持つ資本家に搾取されるしかないという説が広く流布していた。
 ある面ではそれは正しかったかもしれないが、ドラッカーが指摘するように、工業化の到来や技術革新さらにはテイラーの「科学的管理法」などによって、生産性が50倍にもなったのは事実である。その増加した利益の大部分が資本家では無く労働者に分配されたからこそ、小学校もろくに卒業できなかった祖父や親の世代の孫や子供たちが、大学や大学院で普通に学ぶことができるようになったのである。

 しかし、知識社会では「生産財は労働者が保有する」。なぜなら「知識社会」での生産財は、労働者個々人の頭の中にしか存在せず、企業は労働者を雇用するという間接的手段によってしか、その「生産財」を手に入れることができないからである。


<続く>

続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
10月号をご参照ください。


(大原 浩)


【大原浩の推薦図書】

★「客家大富豪18の金言」(甘粕正)講談社
 (PHP版とほぼ同じですが、30ページほど長くなっています)
 https://amzn.to/3lqUl3Q

★「客家大富豪の教え」(甘粕正)PHP研究所
 https://amzn.to/33ym7VP

★「客家大富豪に学ぶ TAO・永遠の成功のための18法則Kindle版」
 甘粕正 昇龍社
 https://amzn.to/3mrcTlP


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)



JUGEMテーマ:株・投資



JUGEMテーマ:社会の出来事



JUGEMテーマ:経済全般




calendar
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>
selected entries
mag2year2016_0000020640_asset-stock_200x200.png mag2year2016_0000020640_asset-stock_200x200.png
twitter
twetter
okuchika
購読無料! 億の近道メルマガ申込はこちらから!
億近申込バナー
まだ登録していない方はこちらからどうぞ!週5回無料で届きます。
億近執筆陣の本
億近本
億近執筆陣の書籍/DVDをご紹介。億の近道コラムのエッセンスをぜひ。
【石川臨太郎】人生最後の著書好評発売中!

「資産を作るための株式投資 資産を遺すための株式投資〜余命宣告を受けた「バリュー投資家」の人生最後の教え〜」
生涯投資家であり続けた故石川臨太郎氏の、投資人生の集大成とも言える最後の書籍が、好評発売中です。石川臨太郎 著、パンローリング刊 2,800円+税
石川臨太郎有料メルマガの特別研究版!
元火曜日執筆者、故石川臨太郎氏の"研究"メルマガ全12回分をイッキ読み出来ます。 著名エコノミスト村田雅志氏による分かりやすい分析が好評です。 詳細は以下のページを参照下さい。
 
categories
archives
recent comment
  • 情熱投資家、相川伸夫が語る注目銘柄 東北特殊鋼(5484)
    内燃機関関係 (01/20)
  • 1981年2月2日 愛知県立春日井高校:コーヒー牛乳の青春。(天国の幸宏へ捧げる)part 2
    ■ (08/19)
  • 1981年2月2日 愛知県立春日井高校:コーヒー牛乳の青春。(天国の幸宏へ捧げる)part 2
    内藤朝雄 (10/12)
  • 情熱投資家、相川伸夫が語る注目銘柄 特殊電極(3437)
    reformer21 (06/15)
  • 公立中学校という選択:区立から難関大学へ その6
    m (05/01)
  • 公立中学校という選択:区立から難関大学へ
    m (03/30)
  • アンジェスMG(4563)の相場シナリオ
    暇潰亭 (10/01)
  • 日本でトップクラスの低PER銘柄
    kkk (02/19)
  • 粘り強くつきあっていれば億の資産ができる
    億の近道 (12/04)
  • 粘り強くつきあっていれば億の資産ができる
    せーねん (12/04)
links
mag2year2016_0000020640_asset-stock_240x65.png メルマガ大賞2008ノミネートバナー
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM