日本株を象徴する代表的な指数の一つである日経平均が先週は4万円台に乗せ、日経平均4万円時代の幕開けとなりました。34年前の高値を更新した勢いを借りての4万円台乗せですが、その指数を構成する銘柄の株価変動が一部の銘柄に偏ってきた点は多くの皆さんが感じてきたことかと思われます。
各メディアはシンボリックな日経平均の最高値更新や4万円台乗せを単純に報道していますが、実際には今回の株高には生成AIに絡んだ半導体関連銘柄に偏っての4万円台乗せの成就があってのことであります。日本株は日経平均に採用されている時価総額の大きな主力プライム市場225銘柄を主体に動いており、この225銘柄を含むかつての東証1部市場銘柄の加重平均で示される1968年1月4日を基準日としたTOPIXがもう一つの指数ですが、これは現在過渡期にあり流通時価総額100億円未満の銘柄は段階的にウェイトが低減される予定です。こちらの方がやや穏健な推移を辿っていますが、これとても上げピッチは速い状況(昨年末2366.39→時価2726.80+15.2%)です。
日経平均が昨年末に比べ18.6%の上昇となっているのに比べると穏健ですが、これは日経平均を構成する一部値がさ株の急上昇が背景にあります。
3月8日現在、日経平均は今期予想PER16.86倍、実績PBR1.52倍、予想配当利回り1.71%(プライム市場は同じくPER16.83倍、PBR1.46倍、配当利回り2.08%、スタンダード市場がPER15.4倍、PBR1.05倍、配当利回り2.15%)となっていますが、この水準自体は過去のバブル相場時代、例えば2000年のITバブル時代に比べてまだ水準が低いため、過熱してはいないと指摘する声があります。
かつてのITバブル相場との比較では今回は半導体製造や生成AI関連銘柄にかなり偏った相場展開であって、それ以外の銘柄にはまだ評価の余地があるという状態なのです。
但し、半導体の成長はその時代背景、特に生成AI時代、DX化の中での産業のコアとしての成長期待が背景にあることを念頭に入れておかないとなりません。
こうした状態の中で日経平均についてはキャップ(特定の銘柄に偏らないための構成比率の上限)を課しており、その上限は2023年10月からは11%、本年10月以降は10%と段階的に下げられる予定。
最もウェイトの高いのは指数の先導役となってきたファーストリテイリング(9983)で既に10%を超えています。その次が東京エレクトロン(8035)でこれも同様の水準となり、今後はいずれもリバランスが必要となります。これをカバーする銘柄はKDDI(9433)やソフトバンクG(9984)などとなりますが、このことからこれまで日経平均を上げるための集中した2銘柄の存在から分散が必要となり、その点が直近は意識されるようになってきたと言えそうです。
現在の日経平均を構成する30銘柄ほどを吟味すると、業績内容や市場人気の高さなどからかなり偏った評価がなされています。決して全面高には至っていない点を改めて認識することになります。
日本には半導体に限らず世界に冠たるテクノロジー系の企業が数多く存在しており、改めてそうした企業群を見直してみるのも良いのかも知れません。
日経平均の構成銘柄には先駆した人気銘柄に対してまだまだ不人気の低PER、低PBR銘柄も存在しております。これが現実の姿でもあり、同様にプライム市場、スタンダード市場にもそうした埋もれたままの銘柄が存在している点に気が付く必要があります。
そろそろそうした銘柄も研究しておきたいところです。半導体関連や人気化している銘柄の上げ相場に水を差す必要はありませんが、多少は冷静に眺める時間が欲しいという状況です。
【昨年末からのインデックスの株価上昇率】
日経平均 33464.17円⇒先週末39688.94円(+18.6%)
TOPIX 2366.39⇒先週末2726.80(+15.2%)
【3指標】
指標/予想PER(倍)/実績PBR(倍)/予想配当利回り(%)
日経平均/16.86/1.52/1.71
プライム/16.83/1.46/2.08
スタンダード/15.40/1.05/2.15
【予想PER50倍以上の主力225銘柄】
まるで小型株のような評価。
1.アドバンテスト(6857)
株価6930円(昨年末比+44.5%)
時価総額5.6兆円 予想PER79.3倍 PBR12.7倍
配当利回り0.49%
半導体検査装置で世界大手。メモリーと非メモリーに2分。
AI半導体用高性能メモリー向けテスター需要の高まりに期待。
今期減益見通し、来期は回復見通し。指標面では割高感強いが、株上げの主役にもなっていますのでどこまで続くのか気になるところです。
2.ディスコ(6146)
株価51920円(昨年末比+48.4%)
時価総額5.6兆円 予想PER75.7倍 PBR15.7倍
配当利回り0.49%
半導体シリコンウェハ切断、研削、研磨の世界トップ企業。
3月4日に日経平均組入れ3銘柄(ZOZO、ソシオネクスト)が発表されたが、その中の一つ。4月からの採用であるが発表後、既に先取りして株価上昇。
3.オリエンタルランド(4661)
株価5020円(昨年末比▲4.4%)
時価総額9.2兆円 予想PER68.6倍 PBR9.3倍
配当利回り0.22%
筆頭株主の京成電鉄がファンドの要請を受けて保有株19.9%のうちの1%を売却し850億円(売却益710億円)を得た話が駆け巡った。
依然として上げトレンドが続く中の一旦の調整場面を迎えた格好。
優待欲しさに株を持つ投資家に支えられ、長期上昇傾向継続だが昨年末に比べると株価下落。23年6月高値5756円まで上昇。今後果たしてこの高値を抜けることがあるのか?それとも波乱の幕開けなのか。
4.レーザーテック(6920)
株価38770円(昨年末比+4.3%)
時価総額3.7兆円 予想PER63.6倍 PBR29.2倍
配当利回り0.49%
最先端半導体向けマスク欠陥検査装置メーカー。EUV光源品独占。
22年10月安値14320円からは2.7倍の水準であるが、昨年末比較では4.3%上昇に留まる。
かつて22年1月高値36090円から22年10月安値14320円まで60%の下落を見たが、今回は果たしてどうなるのか?
5.東京エレクトロン(8035)
株価38360円(昨年末比+51.9%)
時価総額18.8兆円 予想PER52.2倍 PBR11.7倍
配当利回り0.96%
2021年からの営業利益の推移は3206億円⇒5993億円⇒6177億円⇒予想4450億円⇒四季報予想5130億円で時価総額は1.8兆円規模まで先取りして評価。
株主のTBSHD(9401)は同社株を3.4%、1630万株、6253億円を保有しており、ほぼ自社の時価総額と見合う株を保有。今後保有株の一部売却などもありうるか。半導体コア銘柄ながら日経平均の10月からのキャップ(10%)を超える水準でやや上値は抑えられる可能性。
【参考:予想PER20倍以下の主な225銘柄】
銘柄/時価(円)/予想PER(倍)/実績PBR(倍)/配当利回り(%)
東レ(3402)/707/19.5/0.67/2.55
キヤノン(7751)/4598/14.9/1.35/3.26
住友電工(5802)/2259/14.7/0.87/2.74
日本碍子(5333)/1955.5/14.6/0.88/2.56
KDDI(9433)/4647/14.1/1.88/3.0
NXHD(9147)/7609/12.2/0.84/3.94
シチズン(7762)/1008/11.7/1.04/3.97
NTT(9432)/185.5/11.7/1.69/2.7
BS(5108)/6235/11.2/1.27/3.37
トヨタ(7203)/3610/10.8/1.55/1.8
日本郵船(9101)/4550/10.5/0.84/2.9
王子HD(3861)/597/10.3/0.58/2.68
INPEX(1605)/2169/8.3/0.66/3.5
(炎)
●有料メルマガ「炎の投資情報」
億の近道月曜日担当の人気執筆者、炎のファンドマネージャー(松尾範久氏)が、中小型株情報を中心に、時事の投資テーマやIPO情報、取材やアナリストミーティングの鮮度の高い情報まで、プロの目で見た投資情報をお知らせします。
創刊7年を超える老舗有料メルマガ。
毎週月曜日配信
執筆者:炎のファンドマネージャー(松尾範久氏)
最新号(3/11)配信内容は、
■相場の視点
■前号で報告した化学系半導体関連5銘柄の株価チェック
■特別報告 日経平均はまだ割安なのか
■時価総額5000億円超の225採用出遅れ5銘柄
試し読みはこちらへどうぞ ⇒
https://bit.ly/honoh2023
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)